神様ごっこの本編後の小咄です。本編後なのでネタバレありますので、
その点が苦手な方はご注意下さいませ。

 

眺めているテレビからは、よく知ったセリフが流れている。
『僕の幸せを勝手に決めるな! 君には僕が不幸に見えるのか?!』
『見えない! 見えないけど、わたしが嫌なの!』
熱演する役者さんってすごい。自分の作品なのに別物みたいだ。
・・・正確には、書いたのはわたしじゃないんだけど。わたしはあの子に骨組みだけ提供したんだけど。
ちらりと左隣を見る。二人掛けのソファに、一緒に座っている人物。
その人物は、今まさに視聴中のテレビドラマ『フラクタル』にて主人公を熱演している役者さん。
「・・・不思議」
「え? どうした?」
ぼそり、と呟いた言葉は、どうやら彼に聞かれたらしい。お互い視線はテレビドラマのまま。
「青木さんが二人いるみたいです」
わたしが答えると、青木さんが声を殺して笑うのがわかった。なんで笑うんですか、と視線を投げると、彼は「ごめん」と謝った。肩はまだ震えている。
「結衣子が面白いこと言うから」
「面白い?」
「そ。だって俺が二人って・・・」
そしてまた笑い出す。わたしは面白くないので、ソファの上で膝を抱えた。
「ごめんって。結衣子。俺にとっては、あれ別人だから。俺のそっくりさんだから。あくまでキャラクターだから」
「別人、ですか?」
「そ。あくまであれは、結衣子の生み出したキャラクター。テレビ越しだと俺じゃない」
聞きながらわたしはテレビを見る。あれは青木さんじゃなくて自分のキャラクター。
「・・・やっぱり青木さんにしか見えません」
「それは困る」
どこか大袈裟に青木さんが言うから、わたしは首を傾げた。
「どうしてですか?」
「だって、そうするとあの男が結衣子の彼氏になるから」
あの男。テレビの中の青木さん、彼いわくそっくりさん、キャラクター。
『それでも俺は君と一緒にいる! それだけで生きていく理由になるんだ! 好きなんだよ!』
ちょうどまさに告白シーン。なんというタイミング。青木さん、と思うと顔が赤くなる。
自分に向かって言われている訳じゃないのに。わたしのバカ。
「あ、照れてる。浮気されちゃった」
「違! います! あれは青木さんだから嬉しくて当然で、・・・!」
慌てすぎて暴走した。支離滅裂だった。
言って、さらに赤くなる。青木さんも赤くなっていた。
恥ずかしくて二人で言葉を失くして、テレビはいつの間にかスタッフロール。来週最終回らしい。
それも終わって、やっと青木さんが口を開いた。
「・・・告白」
「え、と・・・」
「ちゃんとするから、待ってて。なるべく早くにするから」
「・・・はい」
彼が約束通りわたしに告白をしたのは、それから一年近く先。
ドラマ『フラクタル』が成功して、人気若手俳優になって、たくさんのドラマやバラエティに出て。
映画『slowly night』主演が決まってからのこと。

fin.

 

 

何年かぶりにこの二人を書いたので、もう口調を忘れてしまっていました\(^o^)/
作者的にはすごく好きなお話です。初期の作品だから、読み返すと文章荒削り過ぎですが。

 

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